コラム

ベテラン審査員から視たISO9001の改善 - 品質方針と品質目標の整合

品質方針は、顧客満足や継続的改善といった文言を使う必要が必ずありますか

ISO9001認証取得後、相当年数を経過した企業様でも品質方針は、ほとんど変更されていないといっても過言ではありません。企業様の理念は、これも変わることは少なく、これに沿って品質方針を設定しておれば変更されることはほとんどないわけです。認証取得当時の状況から規格5.3項の要求内容を理解すれば自ずから"顧客満足"や"継続的改善"という文言を織込むことになったと理解されます。

しかし、企業様を取り巻く環境は刻々と変化しています。そしてISO9001:2008年版では、"望まれる成果を得るためにQMSを構築する"と言っています。すなわち経営トップが、顧客や社会に対しどのような価値を提供したいかを"当社のありたい姿"として品質方針に表現することが必要な時期に来ていると思います。結果として"顧客満足"や"継続的改善"という文言を使うことになるかもしれませんが、使わねばならないというわけでもありません。

品質目標は品質方針と整合しているとはどのような設定をいうのですか

品質方針に整合していない品質目標を設定しておられる企業様にお目にかかったことはありません。逆に整合していないケースを考える方が難しいと思います。"品質第一"との方針に対し逆行するような品質目標を掲げることは先ずないでしょう。取得企業様の現在の品質方針は、理念的で非常に範囲が広いためあらゆる品質目標が包含されるようになっていると思います。

経営トップが「ありたい姿」として、組織や制度、すなわちマネジメントシステムを構築したいと品質方針に強くコミットし、全社一丸となってそのコミット実現に向け活動する目標、すなわち品質目標が設定されれば、方針と目標は、"強い整合"関係にあるといえます。

どうしてもいつも同じような品質目標になってしまいます

品質方針の実現は、一朝一夕で実現できるものではないでしょう。比較的近い将来を見据えて中長期の方針として設定しています。そのような場合の全社レベル品質目標は、ある程度継続することも必要かもしれませんし、品質の安定化に関する品質目標であれば、不安定要因を一つずつ対策して行くとしても複数年を要する場合もあるでしょう。

しかし、取得後かなりの年数を経過した企業様でも品質安定化の目標として"クレームの削減"や"工程不良率低減"を毎年品質目標として取組んでおられます。これらの問題点が企業様の"望まれる成果を得るため"に大きな障害となっているのであれば、毎年同じ設定になっても取組まなければならないでしょうが、そうでなく"安定領域"に至らず、改善されたから次の目標を設定しようとしても、変動し、同じ目標を設定せざるをえないのが実態です。

これには色々な原因が考えられます。例えばクレームや工程不良の問題点が軽減されないのは、「プロセスの強化」で述べましたように「プロセス」の足腰が弱いからだと思います。不良再発を繰り返す体質がまだ残っているということです。

数値のみの不良軽減の確認ではなく、改善したかったシステムが改善され、「プロセス」のが計画通りの能力を発揮するようになり足腰が安定したかを評価することが、数値目標以上に重要なことです。

品質目標達成のために改善する必要のあるシステムは何か、品質目標達成計画書にそのための対策を含めて計画することが必須といえます。

そして、数値目標が達成されたならば、改善しようとしたシステムは計画通り改善されたことを評価確認し、目標達成は当該システム改善によるものであるとの見極めが何より重要です。なんとなく達成できた、あるいは「計画したシステム改善」が、どのような結果となったのかも確認していなければ、毎年同じ目標と対策を繰り返すことになるでしょう。

改善された品質マネジメントシステムは、そのプロセスの4M(品質に影響を与える経営資源:Man=人、Material=材料、Machine=機械、Method=方法)が改善されたことであり、今後継続して品質目標と同じ効果を生み出して行くことになるはずです。

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